2011年11月20日日曜日

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 吾輩は犬みたいな芸はできないEmilioである。しかし、ある種の犬のように、命をかけて遊ぶほど無邪気ではない。


 よく魔が差すというけれど、あの時ドッグランでBettyは何かに魅入られてしまった。それが汚いサッカーボールというのが犬だよね。情熱は身を焦がす。ドッグランでのBettyの執念をご存知の方はよくわかるでしょう。


 Bettyと同じことをする犬はそうはいないでしょうが、ご参考までに今回の大騒動の顛末をレポートします。



 あの日、ドッグランから退場しようとママがドアを開けようとしたとき、Bettyはつぶれたサッカーボールを見つけた。それも高いスチールのフェンス越しの物置の上に。
 まだ、遊びたかったんだ。でも、ふつう取れるはずがない。なのに、リードを全力でひっぱって・・・ぶつかった。で、失敗して、「ちっ」て感じで平然と家路についた。これが午後3時


以前激写されたBettyの情熱!
この勢いでボールしか目に入らない。

 その場ではまったくわからなかったけれど、家に帰ってからも、なにやら舌をぺろぺろしている。ふと調べてびっくり!Bettyの下顎の左犬歯がほんの少し斜めに折れてしまったのだ。しかも切り口に赤い血がぽつんと見える。これが1時間後


 痛がるわけでも、大量出血したわけでもないけれど、ほんの少し欠けただけだけれど・・・、いやな予感でいっぱいのママはネットで調べ始めた。


 あるぞ、あるぞ。同じようなことをしでかす犬って、わかる、わかる。体は小さいけれどガッツがあって熱くなる犬種。固いものを噛んで痛めるのは奥歯。ぶつかったり喧嘩して折るのは前歯。ははは。笑い事じゃない、これはオオゴトだ。
 昔はよくおすすめされていた骨やヒズメで歯を折った犬も多い。でも、それ、なかなか気がつかないらしい。いちいち見ないものね。

 どうやら赤い点は歯髄というもので、よく人間が言う「歯の神経」ってやつだとわかった。のんきに放置しておくと、どんどん感染が進んで化膿し、いずれ恐ろしい歯周病になる。目やにが出ると思ったら、上の奥歯の根元が化膿していた・・・とかね。


口の中の写真を撮る気がしないママ。
乙女の尊厳を守ることにしました。
パパは事故後も手術後も
決して口の中を見ません。
チキン!

 処置は方法は歯を温存するか、抜くか。これは破損の状態や処置までの経過時間と、獣医さんの歯科的な技術による。もちろんどちらも全身麻酔。当然処置後に、それぞれメリットとデメリットがある。


 すぐにかかりつけの病院に半泣きで電話を入れて、翌日伺うことにした。検査もあるから食事は抜きでと。これで2時間経過


 こちらには有名な動物の歯のスペシャリストが時々いらしていて、先代のCookieもお世話になった。その腕前は十分承知しているママ。専門家に見ていただくのが、どんなにすごいことかよくわかっている。


 でも明日はいらっしゃらないかも。とりあえずの検査だけするのなら、他の専門医に一気にお願いしたらどうかと、また検索検索。


 ちょっと遠いフジタ動物病院に有名な先生がいらっしゃることが判明。犬仲間でお世話になった方、注目してる方がいることもわかった。スケジュールを確認して、午前中は見ていただける可能性があることも。残念ながらすでに診療時間は過ぎていたので、直接連絡はできなかった。この時5時間経過


 一晩中迷いに迷って、朝、お腹を空かせたBettyを連れてはるばる行きました。吾輩は留守番。まあ、いいけどさ。ついに16時間経過


 渋滞をくぐりぬけ、オープンすぐにどりついた病院で、運良く院長先生に見ていただけた。先生は午後からしばらく出張のご予定だったので、ぎりぎりって感じ。事故後18時間経過


 ママがあれこれと説明していると、とても穏やかで丁寧な先生のお話のスピードが突然変わった。「本当にきのうの3時ですね。」


 なんと3才以上の成犬の場合、24時間以内なら(幼い犬はもうすこし長いらしい)、同じ温存方法でも、歯髄を少しだけ削って残して治せる可能性が高いそうだ。歯髄が残せると「生きた歯」なので、強度などが高くなるそうだ。予後がかなり違うとか。
 それ以上時間が経つと、歯髄を全部抜いてふたをかぶせる、人間で言う「神経を抜く」という処置になる。さらにもっと長い間放置されて、化膿してたりすると、抜くのが一番の処置となる。


               処置の一例
(Bettyはこの処置をしないで済みました。)


 「これは緊急を要する手術です!」
 かかりつけ病院のアドバイスのおかげで、偶然Bettyは食事を抜いていて、しかも多忙な院長先生が無理に時間を割いてくださって、すぐさま緊急手術の準備が始まった。あとはもう、気分はER。血液検査やレントゲンで問題なかったので、麻酔も始まった。ここまでで事故後19時間経過。間に合ったのである!


吾輩しかいない家はすごく広く感じるって。
吾輩もいたずらする気がいささか減る。

 Bettyをお願いして、とぼとぼと家に帰った来たママは、吾輩とぼんやり遊んで時間をつぶした。だれかに「Bettyを守ってね」ってお祈りしていたような気もする。吾輩も祈るぞ。


 やがて24時間経過した午後3時、ママは電話で病院に手術の様子をお聞きした。無事終了。Bettyは元気いっぱいだって。院長先生は終了後、大急ぎで出張に行かれたそうだ。お忙しいときに本当に申し訳ありません。


細菌感染させないために
お薬をたくさんいただいた。
クリームチーズに包むので
Bettyはお薬って大好き。

 夜お迎えに行くと、けろりとしているBetty。わずかな麻酔で処置がすんだおかげだね。食欲がなくなるどころか、説明中の薬を物欲しそうにおねだりする始末。引き継いで説明してくださった先生の邪魔ばかりする。犬歯は少しだけ短くなった。真っ白でぴかぴか、つるん。今日からごはんも食べられる。


 もう、硬いボールでキャッチボールはできないし、激しい引張りっこは無理。詰めた部分がポロリととれちゃうから。もちろん固いものは食べられない。まあ、もともと骨もガムも丸呑みするのでもらえない。
 
 歯磨きしてたわりに、奥歯に結構ついていた歯石も全部とっていただいた。今後、経過をみるために定期的に通院が必要だけれど、全ての歯をチェックしていただけると考えれば、人間と同じかも。


数日間は歯磨きできないので
歯磨きジェルを。
これは吾輩も使えるんだって。

 ついでに吾輩の歯磨きの方法まで伺ったそうだ。え、吾輩も歯磨き必要??


 とにもかくにも、突然の悪夢だったけれど、偶然が偶然を呼んでBettyの歯が救われた。帰るなりIKEAのトラを振り回して、ママに没収されるくらい元気だ。こんな調子でいつまであの歯は持つのでしょう??


 みなさんに感謝します。吾輩のハイパーな姉貴を救ってくださって。もう今年はこれで穏やかな犬猫生活に・・・。あ、吾輩の去勢が残っていた・・・。
 

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