わたしはついにママの弱点を発見したBetty。ママは猫のシャーって威嚇するのが大嫌いだ。理性が飛んでしまうぐらい、嫌いだ。
きっと幼稚園の頃、猫のひげをはさみでちょん切って逆襲されたせいだ。治療の記念写真があるくらい、ほっぺをひどくひっかかれたことがトラウマになっているんだ。
ドッグバッグの中から
わたしを監視するEmilio
キャットタワーからあたりを見回す。
おととい、病み上がりのはずが元気倍増したEmilioが、ママに抱っこされている時に、ふと近づいていったわたしに向かって、いきなり「シャーッ」って威嚇した。
これは遊びの時のファイティングポーズ。
相手に対して体を斜めにして
全ての毛を逆立てて、すこしでも大きく見せる。
だれも教えなくてもプログラムされているんだな。
その少し前、新しいおもちゃで遊んでいる時に近づいた時もちょっと「シャーッ」ってやったので、わたしはちょっとビクついて、ママはあわててEmilioをドッグバッグの中に放り込んだ。
なぜドッグバッグのファスナーが
紐で縛ってあるか?
初めてのことだった。あんなに小さいのに、悪魔のような表情でものすごい迫力なのよ、これが。
それで「シャーッ」の効き目が分かったのか、今回はもっと激しく、全身を大きく突っ張って威嚇したので、思わず抑えたママの両手に、20本の爪のうち何本も突き刺さった。でも、手は放さない。その血がにじむ両手でしっかり小さな肩を押さえて、ママの説教が始まってしまった。
ちょっとでも隙間があると・・・。
居候の分際で、お姉さん犬を威嚇するなんてありえない。「シャーッ」が怖い時に出るのはわかるけど、それは「それ以上近づいたら、徹底抗戦するぜ!」って意味でしょう。やけくそになってうちのBettyに傷をつけたら、ママが噛みつくから!
とかなんとか、その低い声のほうが怖いじゃありませんか。第一そいつに人間の言葉は通じませんよ。
成長して「怖い」って知恵がやっとついてきたところなんだから、だんだん慣れていけばいいんだから。
ちょいちょいちょい・・・と
でてきちゃうのです。
無理に出るから背中に擦り傷が・・・。
でも、ついにママは決心して、Emilioの爪を切ることにした。
そうそう、うちのママは爪切りもきらいだった。なぜかは分からないけれど、傷つけてしまいそうで怖いらしい。わたしたちの爪は小さい頃はペットサロンで切ってもらって、いっぱい歩くようになったら磨り減るからもう切る必要はない。
あいにく猫は2週間に1回ぐらい切るものらしい。いろいろな人に切り方も聞いたし、爪きりはさみも買ったけれど、ずっと躊躇していた。
ところが今回の「シャーッ」事件で、自分の手が傷つくのはともかく、わたしが怪我するのはがまんならないそうだ。絶対に守るんだって。ママ、いいところあるじゃない。
丸いところにはさめばいいのね。
でもね、見にくいんです、老眼じゃ。
老眼鏡をかけて明るい日差しの入る場所でやってみました。細い子猫の爪は鋭くてあんなに傷がついたのに、とても柔らかい。簡単に切れちゃった。ただ、老眼鏡が少し合わなくなってきたので、目を凝らして狙いをさだめているうちにEmilioがあきちゃって、遊びだすことが多いみたい。
ほんの少し切っただけで、冗談のように痛くなくなった。本気で力を入れたらわからないけれど、少なくとも遊んでいて、人間にみみず腫れが出来る可能性は減ったみたい。
ママはずっと、わたしがEmilioを傷つけるのではって心配だったらしい。わざとではなくても体重差は大きいから。でも、あいつの運動能力と防衛本能の方が危険だってわかったらしい。わたしだってやられたらやりかえす・・・かも。
わたしはあんな肉食獣より上品ですって。
なんて優しいお顔でしょだって。
貧乏臭い顔って言ってたくせに!
それで、なぜか頻繁にわたしにあいつのお尻の匂いを嗅がせる。あいつを抱っこしている時に、わたしを呼ぶ。今のところ「シャーッ」はあれっきり封印されている。
試行錯誤して、危険はないってお互い理解できるのか、それとも見事住み分けができるのか、ママの実験は続く。いつ「シャーッ」が出るのか怖いらしいけれど。
0 件のコメント:
コメントを投稿