わたしはママの赤ちゃんBetty。
わたしを愛するママを信じている。
数十年前も、小学生の夏休みには1人1研究というものがあった。巨大なもぞう紙にマジックでまとめるのがお約束。
夏休みには、曾祖母たちの商う旅館になぜか1人で滞在していたママ。忙しい大人たちは、宿題は?なんて言葉を発する暇がない。ちょっとお膳を運んだだけで、お小遣いもらい放題のふざけた日々だ。
やがて両親と妹たちが迎えにやってくる。要領はいいからワークブックはすぐ終わる。問題はもぞう紙1枚以上の理科系の研究だ。
そこにいたのは雄猫のチビ(昔の人がつけたんだから多分そんな名前)。ママが幼稚園の頃、いきなりひげをはさみで切って、ほっぺにひどいひっかき傷をつけられた因縁の猫だ。
吾輩はだまされない。
ママは猫の敵だ。
リカちゃん人形の髪をざっくりカットして、
ついでに寝ているチビのひげをいきなり襲ったんだ。
「猫の1日」と題して、猫の行動パターンと天気や食事などの関係を研究した・・・ことにした。いかにもありそうなデータをすべて捏造して、非常にカラフルな表とグラフでまとめた。チビがけんかで怪我までしたことにしたんだって。しかも観察の苦労まで真に迫ったものを書いたらしい。
かくして、みんなと一緒に黒板の前で発表をして、そろって廊下に展示され、そして選抜されて県の科学展に出展となって、みごと入賞。何食わぬ顔で賞状をいただいたことは言うまでもない。これが小学校5年生。
次の年は、お宮でつかまえたあり地獄の研究だった。本当に実験したかどうか、想像つくよね。
今の朝ドラでおなじみの、のどかな信州にも、こんな悪い少女がいたんだ。この手で卒論も仕事も?おいおい。
はっきり言っておこう。このママにだまされちゃいけない。これから吾輩の猫育ての記録も残す気らしいが、どこまで本当かわからないからね。
安心しているからおへそを出して寝ているの。
いいの、世界中の人が疑っても
わたしはママを信じているから。
確かなことは、ピンチの時は猫に助けてもらうってことだね。今回もけっこう役に立っているでしょ。
まあ、今のママは現実逃避で吾輩の世話を必死でしているけれど、吾輩もまた立派な現実であって、ぼんやりとして吾輩に差し出す手の甲は傷だらけだ。大人にはありえないよ、その傷。
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