2011年6月9日木曜日

Con Mom

 吾輩は、居候ということになっている、みなしご猫Emilioである。拾うなり名前をさっさとつけたくせに、家族に入れるかどうするか、いつまでも決断できない困った一家である。


わたしはママの赤ちゃんBetty。
わたしを愛するママを信じている。

 ところで、吾輩を育てているママは、なんとこどもの頃からのペテン師だった。しかも猫を使って巧妙に仕掛けたこともある。


 数十年前も、小学生の夏休みには1人1研究というものがあった。巨大なもぞう紙にマジックでまとめるのがお約束。


 夏休みには、曾祖母たちの商う旅館になぜか1人で滞在していたママ。忙しい大人たちは、宿題は?なんて言葉を発する暇がない。ちょっとお膳を運んだだけで、お小遣いもらい放題のふざけた日々だ。


 やがて両親と妹たちが迎えにやってくる。要領はいいからワークブックはすぐ終わる。問題はもぞう紙1枚以上の理科系の研究だ。

 そこにいたのは雄猫のチビ(昔の人がつけたんだから多分そんな名前)。ママが幼稚園の頃、いきなりひげをはさみで切って、ほっぺにひどいひっかき傷をつけられた因縁の猫だ。



 吾輩はだまされない。
ママは猫の敵だ。
リカちゃん人形の髪をざっくりカットして、
ついでに寝ているチビのひげをいきなり襲ったんだ。


 「猫の1日」と題して、猫の行動パターンと天気や食事などの関係を研究した・・・ことにした。いかにもありそうなデータをすべて捏造して、非常にカラフルな表とグラフでまとめた。チビがけんかで怪我までしたことにしたんだって。しかも観察の苦労まで真に迫ったものを書いたらしい。


 かくして、みんなと一緒に黒板の前で発表をして、そろって廊下に展示され、そして選抜されて県の科学展に出展となって、みごと入賞。何食わぬ顔で賞状をいただいたことは言うまでもない。これが小学校5年生。
 次の年は、お宮でつかまえたあり地獄の研究だった。本当に実験したかどうか、想像つくよね。


 今の朝ドラでおなじみの、のどかな信州にも、こんな悪い少女がいたんだ。この手で卒論も仕事も?おいおい。


 はっきり言っておこう。このママにだまされちゃいけない。これから吾輩の猫育ての記録も残す気らしいが、どこまで本当かわからないからね。


安心しているからおへそを出して寝ているの。
いいの、世界中の人が疑っても
わたしはママを信じているから。
 
 確かなことは、ピンチの時は猫に助けてもらうってことだね。今回もけっこう役に立っているでしょ。

 まあ、今のママは現実逃避で吾輩の世話を必死でしているけれど、吾輩もまた立派な現実であって、ぼんやりとして吾輩に差し出す手の甲は傷だらけだ。大人にはありえないよ、その傷。

0 件のコメント:

コメントを投稿